Intrapreneur Marketing Note

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新商品の値付け(プライシング)方法

新サービスを開発すると避けて通れないのが値付けだろう。
無形のサービスやソフトウェア、デジタルコンテンツであろうと、有形のハードウェアであろうと値段を決めないことには売上が立たないし、利益が生み出されない。ところが、思ったよりも、社内に、値付けの経験を持った人はいないものだ。どうやって値段を決めていくのか少し掘り下げてみたい。

原価から計算して、一定の利益率を乗せて決定する方法

商品の値段(売上)の中身は、コストと利益で構成されていることは容易に想像が付く。そのため、その商品を提供するのにかかるコストを積み上げて、そこに欲しい利益率を掛け合わせて価格を決定しようとするのはスタンダードと思える。コストは、原価と販管費に分けて算定できるので、この方法だと割とスムーズに答えにたどり着けそうだ。

ただ、この方法には問題がある。コストから積み上げるだけなので、自己完結型の値付けになりやすいのだ。そのため、提供される商品が持つ、「世の中」的な「希少性」を無視しがちな点にある。だから、結果として、割安な料金設定となってしまう可能性を秘めている。本来は、提供する商品が、世の中に存在しないのであれば、強気な価格設定が可能である。最初から控えめに設定することで、自ら利益を削ってしまうことになりかねないので注意が必要だ。

消費者に、いくらまでなら払えるかを聞きだす方法

逆に、購入してもらう側(消費者)に聞き出す方式もある。
PSM(Price Sensitivity Measurement)分析という手法を使うことで、いくらだったら安すぎて買わないのか、いくらだったら高すぎて買わないのかを特定して行く。そして、ざっくり言えば、「安すぎる」カーブと「高すぎる」カーブの交点がベストな値付けだとするやり方だ。ある意味、他己完結型の値付けになる。

この方法の問題点は、実際に使ってみると分かるのだが、交点は比較的割安な方に流れがちなことが上げられる。だから、このやり方も不十分だと思う。

www.macromill.com

浅く広く稼ぐか/深く狭く稼ぎ出すのかで、値付けのポリシーは変わる

コモディティ化してどこの会社でも提供できる商品の場合、値付けも「同質化」に向かいがちで、他社よりも1円でも安く提供し、コストも切り詰めて1円でも多く利益が出るようになりがちである。こちらのケースにおいては、実は値付け(マーケティング)の出番は少ない。

逆に、世の中に存在しなかった商品であれば、値付け自体がブランディングに繋がる可能性があるので、ここは大事に検討した方が良い。基本的に、値段は聞き手の商品に対する勝手な期待を高める効果を持つ。消費者は、高い商品については、高付加価値や希少性とかの何かの理由があって高いはずだと直感的に考えるものだ。

例えば、ワインの価格は、原価から積み上げて考える人には到底理解できない価格設定となる。けれども、モノには、物的な価値に加えて、「経験」という質的な価値があることを理解できれば、「二度と味わえない」とか「もう、製造されない」とか「再現できない」となると希少性がぐいぐい上がり、投機目的の購入も増えたりすることがよく分かる。だから、当初の想定価格を大幅に超えていく。製造側も、商品自体がすぐに欠品することで、本当に買って欲しい人に買ってもらえなくなることを防ぐために、値段をどんどん上げていく。

toyokeizai.net

okutta.blog.jp

では、いくらまで値付けは高くしてよいのか?上限は、売り込みたい消費者の中で、マジョリティとなるセグメントの予算状況(可処分所得)を把握し、その何%を取り込めるか考えるのが楽である。

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例えば、子供の習い事の事業に参入する場合、おおよその平均月謝は15,000円程度と言われている。この15,000円のうち、自分達のサービスがいくら程度抑えられるか(抑えたいか)という観点で考えればよい。そして、全体平均で見るよりも、世帯年収などで更に分けて考えたほうがよりターゲットが鮮明になるので理想的である。

全世帯から均等に5,000円を頂くよりも、アッパー層から30,000円頂く方が結果的に良かったりもするのだ。全員を対象にしてプライシングするのは絶対的に避けたほうが良い。

benesse.jp

事後の値上げは大変。事後の値下げは簡単。

事後の値上げは、既存顧客への説明や、販促物の差し替えなどで結構なパワーを使うだけど、事後の値下げはあっけなくできてしまう。だからこそ、初期の価格設定については慎重に野心的に取り組むべきだと思う。

また、値付けの経験がないと、どうしても売れ行きを心配して、過度に安く設定しがちなので、思い切って、最初に思った価格設定の3倍くらいの価格設定にしてみると良かったりする。そうすると、ヌルイ商品コンセプトでは、むしろお客様に失礼になるために、コンセプト自体の磨きなおしに目を向けることになるからだ。自分自身にプレッシャーを掛けてみるのも悪くない。

いずれにせよ、コストを削って利益を捻出することを考えれば、十分な価格を設定して売上を稼ぎ出す方が絶対にいいので、それくらいのスタンスでやってみた方が良い。

海外勤務なのに、英語力が追いつかない人はどうすればよいのか

その日は突然来た

わずか2年弱ではあるけども、サンフランシスコのオフィスで働いていた。
それまでは、英語が大嫌いで、大学でも第一外国語をスペイン語を選択していた位の酷さだった。中学受験以来、ほとんど英語の勉強はしていなかった。だから、30才過ぎても極力使わずに避けてきたのに、その日は突然来た。

「では、あさって10時に、サンフランシスコのオフィスで待ち合わせで」

その当時、ソーシャルゲームを開発する会社に勤務していて、会社は北米市場に打って出ようとしていた。そのために、すでに米国のスタジオを買収し子会社化していた。けれども、なかなか成果の上がってこない子会社に痺れを切らした本社は、マーケティングの梃入れをすることになった。そうして、国内のマーケティング経験があった自分が、現地子会社オフィスに赴くことが決まった。

しかも、現地へ赴くことが決まった会議で、「あさって10時にサンフランシスコに集合」と言い渡された。国内出張で大阪に行くくらいの感覚で言われた。だから、全く心の準備もできず、語学の補修(補習)もできず、海外出張用のスーツケースすら準備できなかった。緊張しながら「ビジネス出張 入国 受け答え」とかググッていたのが思い出せる。

そして、米国への出張にはパスポートだけじゃなくて、ビザが無ければESTAが必要だという当たり前を理解したのもこのときだった。

jp.usembassy.gov

すべてが不安

当然のことだが、英語から距離を置きすぎたので、ただでさえ入国審査も不安なのに、ビジネス目的での滞在という初めての経験が更に不安を掻き立てられた。現地について指定のホテルに移動するのも不安。指定されたオフィスまで移動することも不安。現地スタッフとのミーティングは更に不安。ありとあらゆるものが不安で、全く楽しみに出来なかった。

現地のオフィスに何とか着いて、向こうのスタッフと一緒に会議を始めたのだけど、何も言ってることが分からずただただ、虚しかった。一緒に同行してる海外経験の豊富なスタッフのおかげで、通訳してもらってやっと理解できるけど、議論が白熱すれば、通訳は間に合わないので自分だけ放置されてしまうこともあった。

このとき、初めて自分の語学力を心の奥底から後悔した。情けないなと。
とにかく意見を伝えられない。反論も出来ない、同意も出来ない。だから指示が出せない。結果が残せない。

そして、一番へこんだのは、現地のスタッフから言われた一言だ。

「I removed your account.」

マーケティングの現地戦略を立てるために、過去の重要なローデータへのアクセスが必要だった。だから、言葉が通じず、ろくにコミュニケーションが全然取れない日本から来たスタッフであっても、渋々、現地の担当者はアクセス権を与えてくれた。

しかし、この日本人(私)は、このデータを次にどう扱おうとしているかを説明するのに十分な言語力が無かった。だから、彼らには不安だったと思う。例えば、扱い方次第では、現地スタッフの処遇が悪くなることも考えられるわけである。だから、極力、意思決定に重要なデータへ私が接触しにくくしたのかなあと思う。

そして、タイミングを見て何かの理由をつけてシャットダウンされた。
ただ、とにかく相手から、拒絶されたことは良く分かった。

当座は、できない語学よりも、できることに集中

とはいえ、いきなり語学が出来るようになるはずもない。そこで、語学の習得をしつつも、現地のスタッフとの協働ができる状態を目指すことにした。現地でも通用しそうな自分の武器を見直すと、マーケティングの専門知識と経験しかやはりないことに改めて
気が付かされた。なので、現地のスタッフが最も必要としているものを提供することにした。

当時は、アプリに対するプロモーションの体系だったロジックが定まっていなかった。
だから担当者が思い思いに「このアプリはイケテルと思うから大目にプロモーションする、このアプリはそんなにグラフィックの仕上がりが良くないからプロモーションはしない」的に感覚で判断をしているので、データに基づいた判断が少なかった。だから損をすることの方が多いので、次第にマーケティングコストの投下を渋るようになっていった。

そこで、日々のパフォーマンスデータを過去分も含めて集計できる期間全てを取得し直し、向こう3ヶ月~1年の収益予想モデルを組み立てることにした。これにより、ローンチ後、数週間の時点で、将来の売上予測(LTV予測)を可能にし、プロモーションの投下限界を示すことができるのだ。こうすれば、黒字運営が可能である。

改革よりも、小さな成果を共有し一緒に変化を起こすことが大事

予測モデルを作るのには、ローデータがどうしても必要だった。けれども、データアクセス権を取り上げられていたので、日本語ができる現地スタッフを見つけ出して、仲良くなって勝手に頼み込み、正規ルート以外の方法でローデータを取得したりした。

こうして出来上がった予測モデルの効果は絶大だった。データ上、パフォーマンスが確認できれば、ローンチ直後に一気にプロモーションを投下できるので、ダウンロードも獲得できるし、それで売上も一気に積みあがった。iOSでもAndroidでもGrossing Rankingの上位に喰いこんだ。

結果が出てきたことで、現地のスタッフとの関係性は敵対や疑心暗鬼から、信頼に変化していった。そこからは、提案も通りやすくなり、私のつたない英語であっても、相手からの譲歩(忍耐)のおかげで何とか考えを汲み取ってもらえるようになってきた。やっと、手ごたえが出てきた。

アプリ開発チームからも、マーケ担当者の主観で決まっていたプロモーションルールが、データドリブンに改められたので、一定のパフォーマンスを出せば、大きく育ててもらえることが周知できた。だから、彼らのモチベーションアップにも繋がったと思う。

ホワイトボードと大き目のキャンパスノートにグラフを書き起こす

この経験から、専門知識があれば、国籍を問わず、尊敬を集めることができることも理解できた。そして、抽象的な考えや思いを披露するのに比べて、定量的な数字を元にしたプレゼンテーションであれば、多少の言語力と、事前の準備さえあれば、粗方乗り切れることを知れたのは大きかった。

ホワイトボードと、大き目のキャンパスノートを多用するようになったのもこの頃からだった。同行していた海外経験豊富なスタッフですら、海外のスタッフとコミュニケーションを計る際に使っているのだから、語学が不自由な自分が使わない理由は一切無くて、どんどん真似させてもらった。

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ビジュアル的に説明し、知っている単語を書き添えるだけで、コミュニケーションは一気に深められる。口頭で一生懸命に文章を組み立てるよりも、圧倒的に説得力を持たせられるので有効だった。

日常業務(主にメール)に使う言語を優先して覚える

言語の習得も、大学で履修するのが目的じゃないので、仕事上のパフォーマンスに直結する単語をひたすら覚えていった。だから、日常生活で飛び交う、何気ない挨拶とかの方は、みんな早口だし、よっぽど難しくて、いまだに上達していない(苦笑)。

完全に読み込んだのは、すごい「英単語手帳」―仕事ができる人の英語常識755 (知的生きかた文庫)くらいで、あとは、同僚から来るメールの中に登場する知らない単語を、メモして覚える方式にした。途中から、Facebook上に、自分しかいない「英語」Groupを作成し、そこに単語と意味を書き込む方式にすることで、スマホでアクセスできるようにしていった。

説明は単文(短文)にする。難しい単語を無理に多用しない

同行者の中で、海外のスタッフとのコミュニケーションが上手い人がいた。彼の特徴を真似しようと思って、よく観察していると分かったことがあった。

  • 決して発音がネイティブなみにきれい(流暢)ではない
  • 利用する単語のバリエーションは少ない。ずば抜けて難しい単語を多用しない
  • 文章は短くする。関係代名詞的なものは多用しない

現地のスタッフと同じように流暢に言語を扱うことと、業務を遂行することは全く別物だったことに気がつけたおかげで、肩の力が抜けて、楽になった。

そして、ちょうど、その頃、ハーバード大学に留学したGabaの創業者の青野さんの本と出会えた。自分が思っていたことと結構重なることが多くて、納得した。

欧米人を論理的に説得するためのハーバード式ロジカル英語

欧米人を論理的に説得するためのハーバード式ロジカル英語

 

話しかけられる前に、自分から話しかける

最初は、話すのがとっても苦手だった。話しかけられると、相手が何を言っているのかの理解から始めないといけないので、そこが憂鬱で、いつも緊張していた。分かっていないのに分かってるふりをするのはもっと辛かった。

そこで、自分から話しかける方式にした。そうすることで、事前に話したいフィールドを自分で定められるから、頭の中で準備ができるようになった。たまに、脇にそれてしまうこともあって焦るが、それでも今までよりも緊張せず、圧倒的に楽に話せるようになった。

専門知識と経験は、ビザ取得をアシストしてくれた

それに、専門知識と経験のおかげで、私はビザの取得ができたのも大きかった。
日本で働いている限り、ビザのことはあまり考えることは無いと思う。けれども、ビザを取得できたおかげで、家族を日本から呼び寄せることもできた。家を借りることも出来たし、自動車免許も取得できた。こうして現地で生活が始まった。

ちなみに、米国ビザの取得のため、米国大使館に行って審査を受けたのは今となってはいい思い出だ。個室でゆったりしたソファにでも腰掛けながら、大使館員と会話しつつ、審査を受けるのかと勝手に思い込んでいたが、実際には、まるで、選挙の投票所とか、自動車の免許センターみたいなカウンターが並ぶところで、ガラス越しに立ちっぱなしで、審査を受けることになるとは知らなかった。

○大使館の面接の勝手なイメージ

○実際の面接の流れ

語学があればもっとイニシアチブを取れたはず

とはいえ、専門知識に加えて、語学があればもっとイニシアチブを発揮できたと今でも思う。そして、もっと早く成果に辿りつけたはずだと思う。日本のオフィスだったら、すぐにできることが、たかだが言語のせいで制約されてしまうのは、もったいない。

海外での勤務を期待して、自分からチャンスを掴むこともあるだろうし、私のようにチャンスが勝手に放り込まれることもある。いずれにしても、語学は、準備しておいて損は無いからやっておいたほうがいいよと、10代の頃の自分に会ったら言ってあげたい。

逆算的なキャリアアップの勧め

新卒スタッフが入社してくるシーズンとなり、入社したばかりの若手から「どうやってキャリアを積んでいくべきか」と相談を受けることが多いので、私が考えていることを書いてみた。

がむしゃらに仕事に没頭すれば、自分で満足できるキャリアを得られるわけではないと私は考えている。人生にはある程度の計算が必要だが、逆算的に歩むためには、どうしたらいいかの参考になれば幸いだ。

キャリアは、自分が歩んできた過去の積み上げである

スガシカオのProgressという名曲の中に、こんな一節がある。

ずっと探していた理想の自分ってもうちょっと格好良かったけれど、ぼくが歩いてきた日々と道のりをほんとは”ジブン”って言うらしい

キャリアとはまさにこれだ。その人の「今」は断片的であり、これまでに何をやってきたかが最も重要である。

西海岸のベンチャー起業家や周囲で活躍している先輩はかっこいい。けれども、大概、成功している人というのは、関係が浅い第三者に対して、地味な業務の積み重ねや、思い出すのも嫌な失敗や、情けなかった経験をつまびらかにはしないものだ(メンツの問題もあるが、失敗こそが重要な資産であることを一番理解しているからでもある)。

だからこそ、大切なのは、多かれ少なかれ成功者であっても、ずっと日の当たる道を歩いてきたわけではなくて、成功している「今」と比べれば、圧倒的に不遇な時間を過ごしていた時もあるということを理解することである。思ったような仕事を任されない時期もあるかもしれないが、一定の期間はそれを受け入れるのも肝要である。間違いなく様々な気づきがある。

正しいフォロワーシップを発揮できる人材になること

個人の能力を高めていくためには、仕事を通じて経験を積み上げる必要がある。ただし、そのためには、配属された組織の中で孤立せずにチームに貢献していくのは大変重要なテーマである。1メンバーとして目指すべき姿としては、リーダーにとっての「パートナー」となることである。

下記は、アイラ・チャレフ著『ザ・フォロワーシップ』に書かれている内容であるが、1メンバー(フォロワー)であっても、そのスタンスによって分類できる。 

ザ・フォロワーシップ―上司を動かす賢い部下の教科書

ザ・フォロワーシップ―上司を動かす賢い部下の教科書

 

 

テンプスタッフ社ホームページより引用

ついつい成果を出すことに夢中になりすぎたり、他の人からの見え方を気にして恰好つけようとして独りよがりな提案をしていたりしないだろうか?逆に、言われたことしかやらない状態に留まっていないだろうか?

大切なのは、配属された組織のリーダーから、まずは信頼を勝ち取り、任される職責範囲を広げていくことだ。この広がりが無ければ、社内ですらキャリアアップしていくことは困難になる。

president.jp

知ってる・できる・続けている・稼げる

ある分野においてプロフェッショナルを目指す上では、自分が何かについて「知ってる・できる・続けている・稼げる」のどの状態にあるのか、客観的に把握しておかなければならない。

プロというのは、「稼げる」状態であるべきだし、常にその状態を目指すべきだと思う。「知ってる」だけの薄っぺらい人材は、Google検索やらAIに代替されてしまう。「できる」人材は、単に「やったことがある」だけではないのか考えなければならない。

私はネットサービスに長く関わっているので、新卒スタッフや中途のスタッフでも、事業部にアサインされたのに、「個人でアフィリサイトを立ち上げて一円も稼いだことのない人材」を結構見てきた。

野球選手になったのに、草野球すらしたことが無い状態であることを理解していなし。悲しいし、せっかくの機会なのにもったいない。

前述のフォロワーシップにも関係するが、誰かから与えられなければ何もできない状態ではこの先戦えない。この手のスタッフは、草野球(個人アフィリ)ですら、厳しいヒエラルヒーが成立していることを理解していない。

下記のアフィリエイトに関する統計データは10年くらい取られているけど、ほとんど変わってなかったと記憶している。要するに、仮に始められても、続けられるかどうかは全く別の問題なのだ。

アフィリエイトでの1ヶ月の収入は、全回答者 2,394 名のうち「収入なし」が 23.6%と突出し、「1000 円未満」が 17.4%であった。「収入なし」「1000 円未満」の 2 回答で約 40%を占めた。一方で月 100 万円を超える割合が、全回答者の 10%超存在し、昨年度の約 2 倍の比率となった。
日本アフィリエイトマーケティング協会

アフィリエイトという仕組みを「知っている」、そして実際にサイトを運営「できた」、そして「続けている」に深く関わるのが、「稼げている」かどうかであろう。結局、稼ぎ出せなければ、本人のモチベーションも続かないし、周囲の期待もあがらない。

情報の一次ソースになる

「人でも物事でも、よく知る努力をしない限り、何も知ることはできない。知ることに近道はない。特に個人的な経験によって得られる知識に近道はない。努力なしの近道や手垢のついた常識に頼るくらいなら、何も知らないほうがよほどましだ。」ベン・ホロウィッツ「Hard Things」 

HARD THINGS

HARD THINGS

 

ビジネスにおいて、周囲からの信頼を勝ち取るには、自分が任された領域が抱える課題について、誰よりも丁寧で、そして深い知見が必要になる。これはインターネットで時間をかけてググって済ませられるものではなくて、実際に現場に配属されて体感した経験が重要であり、特に、顧客と向き合いクレーム(たまには感謝)を直接面と向かって言われたような「生々しい」経験ほど資産となりやすい。

少なくとも、新人で配属された時点では、会社の先輩や経営陣と比べて実績はないので会議などでの発言力や影響力は持ちにくい。だが、先輩たちは、年次があがるにつれて、この「生々しい」経験をすることが少なくなるものだ。これこそが、「足で稼げる」情報であり、知識や経験が豊富な諸先輩と互角に打ち合うための材料になりうる。

この情報をたくさん持っている新人スタッフほど、上長から重宝されやすくなり、必然的に新しい仕事を割り振ってもらえる確率が上がる。つまり、自分が情報の一次ソースになることで、上長がググるよりも適切な情報を提供できる立場になればいいのだ。これは、上述のフォロワーシップにある「パートナー」的な役回りともいえる。

20代で1/100。30代で1/10000の人材になる

単純な話、給与(稼ぎ)を増やしたいのであれば、世の中的に貴重な人材になればよいのだ。プロ野球選手、外科医、パイロット、プロ経営者(MBA)など世の中で高給取りな仕事をしている人たちは、突き詰めて考えれば、その仕事を得るためには高い制約条件がある職種にいるわけだ。結果として、任せられる担い手が少ないために希少性が高くなり、稼ぎは大きくなるという構造にある。

このことはどのレイヤーの仕事においても同じことが言える。とにかく、マーケットが必要とする稀有な存在になる努力が必要だ。決して、今、在籍する会社の歯車として求められるだけの人材では駄目だ。

レアな人材になって付加価値を高めるには、まずいまの仕事で100分の1の人材にならなくてはいけない。100分の1と聞いて腰が引けるかもしれないが、実はそれほど難しくない。マルコム・グラッドウェルは『天才!成功する人々の法則』で、さまざま実例をあげながら、どんな人もある分野について1万時間練習すれば、その道のマスターになれることを示した。1万時間は、1日8時間、年間200日働いたとして約6年。営業でも、経理でもいい。多少の個人差があるかもしれないが、その仕事を少なくても10年真面目にやれば、誰でも自ずと100人に1人のレベルに達するのである。

logmi.jp

藤原さんの話の中にもあるが、1分野で1/1,000,000の人材になるのは相当に難易度が高いことではあるが、3つの分野で1/100を目指すのは、無理がなくて現実的な目標にしやすいと思う。

特に、「1万時間を費やせば、ひとつの分野で1/100の人材になれる」という指針は、腹落ちした。1日8時間×365日×3年≒10,000時間なのだ。

私はエンジニアとしては1/100になれなかった。費やした時間が明らかに足りなかった。1年で諦めてしまったからというのが根本的な原因だったのだろう。しかし、その後転職して、「ネットサービスのプロデューサー(7年)」→「海外でアプリマーケのスペシャリスト(2年)」→「新規事業開発のスペシャリスト(3年)」という経歴を辿ったが、それぞれにおいては1/100になれたのかもしれない。二つ目の海外の仕事は激務で、1日8時間どころではなかったから2年で10,000時間を超えたと思う。

結果として、ある程度のユニークな人材に30代中盤までに変化できているのはラッキーだった。

自己評価・社内評価・社外評価

20代の頃に尊敬している先輩から教わったことの一つに、「毎年、職務経歴書を書き直し、ヘッドハンターに開示しておく」ことがある。これによって、自己認識を正すと同時に、在籍している会社における自分の評価がマーケットの視点で見た場合にどうなのかを確認している。

最近では、国内ならビズリーチ、海外ならLinkedinを使えば、ヘッドハンターとの接触は容易になってきているので、試してみるとよい。

例えば、一年間自分なりに頑張ったとしても給与や処遇が上がらないことは多々ある。そんな時に、つい会社や上長など環境に責任があると思いたくなるが、本当にそうなのかを見極めることは、キャリアアップの重要な視点であるのだ。かっとなり、感情に任せて転職しても上手くいかない。

もしも、「社内評価<社外評価」であれば、自分の思い込みは正しいのだ。職場を変えたりして環境を見直すことはありだと思う。おそらく転職によって、新しいポジションを確保できたり、給与などの処遇も改善できる可能性は高い。何よりも気持ち良く働ける状態にあることは、大事だからだ。

しかしながら、「社内評価>社外評価」の状況にあることを、突きつけられた場合、環境を恨みたくなる気持ちはグッと堪え、また1年間、在籍先で活躍することを誓った方がいいだろう。このケースでは、転職しても満足行く結果にはなりにくいからだ。

むしろ、マーケット評価よりも高い給与や処遇を与えてくれている環境にいることに感謝し(感謝したくない気持ちもあるだろうが)、まずは社内と社外の評価をイーブンにもっていけるように努めることをお勧めしたい。

マネジメントスタッフの評価に必要なこと

組織の中で、運営の鍵を握るはずのマネジメントスタッフだが、評価軸がはっきりしない会社はまだまだ多い。これまでの経験を基に、優秀なマネージャーを見つけ出すのに便利な指標をメモしておく。

 

「自分よりも優秀な人材を採用・育成できているか」

結局のところ、どの階層のマネジメントであっても、これに尽きる。
マネージャーは、自分より優秀なリーダーを見つけ出せたか?
経営ボードは、自分より優秀なマネージャーを見つけ出せたのか?

Aクラスの人は、Aクラスの人と一緒に仕事をしたがる。Bクラスの人は、Cクラスの人を採用したがる。

A-level people want to work with A-level people. B-level people tend to hire C-level people.──Silicon Valley proverb

一年間で一人も自力で採用できていない役員とかマネージャーがよくいるが、一番重要な仕事を怠っていると言える。最終面接に出ればいいというものではない。自分の肩書をフル活用して、引き抜きたい人材層にアプローチし続けているかどうかが重要なのである。

優秀な人材はアイデアを持っている。アイデアを生むのが好きな人たちだ。管理職はこうした新たなアイデアを常に好むわけではない。恐怖心を持った上司は、自分よりも良いアイデアを持つ人を特に恐れ、新たなことに挑戦するのを好まない。新たなアイデアはうまくいかないかもしれないからだ。恐怖に支配された上司は、新たなことを試して失敗すれば、自分の評価が下がったり、問題になったりするのではないかと恐れている。

優秀な人材は就職の要件を持ち、自分は雇用に適した人材だと知っている。多くの管理職は、将来自分を批判するかもしれない候補者や、良い業績を出したことで昇給や賞与を要求するかもしれない候補者を選ぶことをためらう。

forbesjapan.com

「仕事をいくつ生み出してきたか」

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魅力的な仕事を創造できると、仕事をフックとして、優秀な人材を外部から引き抜いたり、社内から集めることができるようになる。給与などの条件で他社に負けることがあっても、仕事内容自体に魅力が込められるようになると、候補者の興味や関心に働きかけができるようになるので、中途採用においては武器になる。また、仕事が創造できるようになると、社内の他のスタッフからの評価も、「面白そう」「楽しそう」「イキイキしている」といったポジティブなものになるため、公募や異動などで、自分の部署を指名してくれる確率が上がる。こうすることで、優秀な人材が集めやすくなる。

出来の悪いマネージャーは、仕事は生み出すのではなく「与えられる」というスタンスであることが多い。そのため、与えられた仕事を推進するために、足りないパーツを埋めようと頑張るが、そんな仕事は候補者にとっては全く魅力的ではないので、優秀な人材は遅々として集まらない。

「部下の育成はできたのか?(社内表彰は?)」

育成の結果がどうだったのか、TOEICのように点数で計れるものは少ない。
言葉にするならば、「次のタームで、任せる仕事内容がレベルアップしそうか?」だと思う。ただ、この観点では、自分の配下チームメンバーであれば、与える仕事内容を変えることはできるが、有効範囲が狭い。

もしも、部下の将来を考えて、本気で育成するのであれば、他のグループからも認められやすい、「社内表彰」を取らせておくことをお勧めする。社内表彰を取ることで、全社プロジェクトへのアサインなどが決まりやすくなり、本人のキャリアにとってもプラスになるためだ。

ハーバードビジネスレビューの中で、「部下の仕事の満足度は上司の専門技能に左右される」という論文があった。

結論はこうなる。従業員が最も喜びを感じるのは、「経験に裏打ちされた知識を持つ上司」の下で働くときであり、その喜びが仕事のパフォーマンスをも高めるのだ。

www.dhbr.net

 

新しいスタイルのマネージャーは「エキスパート・リーダーシップ」があるそうだ。単なる世話焼きではなく、実践的で具体的なサポートが出来なければ、マネジメントの価値は無くなってしまう。

「ポストをいくつ作ったか」

自分の配下のスタッフを育成したのちは、速やかにマネジメントのポストを与え、経験を積ませていく必要がある。マネジメント経験の有無は、キャリアにおいて明確な差となるので、部下の将来を本気で考えるなら、四の五の言わず経験させなければならない。そのためにも、前段の仕事を生み出す必要性がある。仕事が発生するということは、遂行に必要なポストが生まれる可能性が高いので、ポストにつけやすくなるからだ。

もしも、ポストを新たに生み出せなくても、自分よりも優秀だと思うスタッフに対しては、自分のポストを代わりに差し出していくくらいの覚悟が必要だろう。自分より優秀なスタッフに出会えたのだからむしろラッキーだと思えばよい。自分のポストが無くなることを心配する人もいるが、自分がポストを掴むチャンスなんてまだまだあるわけだと信じられないようであれば、そもそもマネジメントを担当する器じゃない。

出来の悪いマネージャーの場合、配下のメンバーに延々とポストを与えない。そもそも、そう思うマネージャーにとっては、ポストは誰かから「与えられた」ものでしかないので、「生み出す」ことについては無関心だったりする。

エキスパート・リーダシップは特に大事になる

もしも、組織のコンディションが悪い場合、自分の上長や、会社の経営スタッフを、上述の4つのアセスメントで測ってみることをお勧めする。

今の時代の「マネジメント」に期待されるのは、単なる「評価者」としての役割ではなく、「能動的なコーディネーター = エキスパート・リーダーシップの発揮」だと思う。配下のマネージャーを評価するのにもこれらのアセスメントは役に立つし、メンバーの立場で見ても、自分の置かれている環境を見直す意味では、素晴らしいマネジメントの下で働けているかどうかを確かめるためにも、ぜひ一度アセスメントを試してほしい。

サービスのコアバリューの書き換えは、価値をデフレさせる

グルーポンの甘酸っぱい思い出

LINE Payが、利用者の確保を狙って、友達に送金すると、マクドナルドやローソンの利用券がもらえるキャンペーンを実施している。他にもドコモやソフトバンクKDDIなどの通信キャリアも同様な施策を打ち出し、ユーザーの囲い込みに努めている。

これを見て、ものすごく甘酸っぱい記憶が思い出された。7-8年ほど前、米国発のグルーポン(日本では共同購入とかフラッシュマーケティングとか呼ばれていた)が日本を席巻していた。当時、日系のネット企業に勤めていた私も、漏れなくこの旋風に乗っかることになり、いわゆるクローンサービスの企画開発に携わったのだ。

米国の大資本を背景に、グルーポンは、日系のクローンサービスを買収したりしながら日本市場を攻めに攻めてきた。当然、オンラインのマーケティングもかなりのやり込みようだった。信じられないかもしれないが、当時の日本のGoogleリスティング広告SEM)は、ほぼグルーポンに買い占められていたような時期があった。

例えば、ひらがなの「あ」とか、単体では意味を成さないワードまで入札がなされていた記憶がある。とにかくありとあらゆる検索クエリを買い漁っていた。

検索クエリを買占めるだけで満足できなくなった彼らは、皆が欲しがる各種の金券(例えば、ハーゲンダッツのギフト券だったり、マクドナルドのギフト券だった)を通常の半額以下で買えるといった特別な商品(ディール)をフックにして、利用者の拡大に走った。確か、米国では、グルーポンが、Gapの金券を売り出して、当時のギネス記録を作った記憶がある。そう、これが冒頭のLINE Payのキャンペーンの話に繋がってくる。

日本でもクローンサービスの各社も含め、多種多様な金券をベースとしたディールを投入したので、一時はネット上で、どこのサイトで何が売りに出されるかが話題になっていたものだ。

サービスは一気に盛り下がっていった

その後、グルーポンサービスは、一気に下火になった。伝説となっている「おせち事件」があったことも影響しているだろう。

uranaru.jp

ただ、一番の原因は、そのグルーポン的なサービス自体で享受できる価値が、デフレしたことにあると思う。グルーポンが駆け出しの頃、売りに出される「ディール」は、毎日1つだった。そのディールは、本当に価値があるもので、売り出し枚数も少なくて、販売開始の時刻になると、サイトを更新して待っていたものだ。例えば、通常だったら1万円を優に超すような高級なレストランが、条件付きではあるが、半額で購入できたのだ。

ところが、競争が激しくなる中で、グルーポンは、売上重視に舵を切ったように思えた。その後、 グルーポンはIPOすることになるのだが、すでにIPOを前提として経営していたようで、事業拡大の路線を止めることはなかった。

その結果、毎日1つだったディールは、気が付いたら無限に掲載できるようになっていて、どうでもいい商品が販売されている状態に陥った。24時間以内とかの販売時間制限も、売り出し枚数の制限もみんな無くなっていた。結果、グルーポンサービス自体が持っていた全ての提供価値がデフレした。下手すると無くなっていた。

グルーポンの動きに追随するしかない日系のクローンサービスも同様にサービスを変質させた。その結果、どこでも手に入りそうな商品が、なんとなく半額で買える激安ECサイトに成り下がってしまって、日本でもグルーポンサービスは下火になっていったように思える。それなら、Amazonでも楽天でもいいやと。

Grouponの株価は、IPO時の価格を超えられずに低迷している

finance.yahoo.com

クーポン文化を本気で定義し直す気概をニュースアプリは持てていない

ちょうど最近だと、スマニューとグノシーがクーポンタブをそれぞれに実装しているのは興味深い。スマニューは先行していて彼らには「精神」があり、グノシーがコピーキャットだから「精神」が無いとか言われたりもする。

note.mu

あの当時を過ごした自分からすれば、「クーポン自体が持つ従来の価値=コアバリューが大きく変わるわけでは無いから、アグリゲートプレイヤーが紙からネット、ネットからアプリに変わるくらいでは、大したインパクトはない」と思う。

UIとUXはコアバリューを演出する所詮は装置だ。だから、ニュースアプリは、古くからアルアグリゲーター型サービスの一つのままであり、「ライフスタイルチェンジャー」にはならない。

毎日のユーザーリーチの接点を、スマニューとグノシーのどちらが多く取るかの場所取りくらいしかできないわけで、グノシーが後発で恥も書き棄て、コピーキャットを投入してくるのは常套手段として理解できる。ただ、そこに、真の変革への気概は無いので、ホットペッパーが全国でフリーペーパーとして流通したときや、グルーポンが登場した当時の衝撃を超えることは到底出来ない。

プロモーションを先行しすぎると、ユーザー離れに繋がりやすい

グルーポンを思い出すと、事業が立ち上がった直後に、サービスのコアバリューを維持するための様々な準備(インフラ基盤、人事制度、営業戦術)が整わずに、一気にスケールアップを狙ってIPOに向かうと、その実現を優先するため、コアバリュー自体を自分自身で書き換えてしまうという自己矛盾を引き起こすことに気が付かされる。

これによって、グルーポンはサービスの価値をデフレさせてしまい、ユーザー離れを引き起こしてしまった。

さらには、IPOゴールとした場合に、利用者数の拡大という命題だけは残るので、プロモーション/広告&販売管理費に多額の投資を行っていた。利用者を一時的に集めることは出来たかもしれないけど、その時点で、コアバリューは変質していたから、当初、経営陣が期待していたLTVやリテンションには結局ならなかったんじゃないかと想像している。

サービスの成熟を待って、プロモーションを実行に移すのは勇気がいる。市場は競争相手がいるわけで、誰かが先行してしまうかもしれないからだ。けれども、今思うのは、未成熟な状態で、プロモーションしたり営業を拡大しすぎるのは、良策とは思えないし、一番最悪なのは、その急ぎの戦術を正当化するために、事業戦略やコアバリュー自体を書き換えてしまうのは避けたほうがよいということだろう。

私も、LINE Payのアカウントは持っているけれど、使ったことは無い。実施中のキャンペーンでは、10円を友達に送金すると、何かしらの利用券がもらえるのだけど、送金できること自体の価値が高くなければ、継続して使うことにはならない。

同様のキャンペーンは、他の事業者でも見受けられる。

trafficnews.jp

何でもかんでも「無料」にすれば、それが価値になると考えているかもしれないけれど、それは「付加」価値なので、一番のコアバリューをどこにして強化するかが重要なのだ。

AlipayやWechat Payのような金融サービスの付加価値を、LINEがどのスピード感で投入できるのかが、決済アプリの命運を握っていると思うから、楽しみに待つことにする。

www.technologyreview.jp

thebridge.jp

(2020/2/5追記)案の上、Origamiが墜ちた

あらかた予想通りだったけど、中身のないサービスは続かない。

メルカリへのオリガミ売却価格は1株1円、事実上の経営破綻で社員9割リストラ(ダイヤモンド・オンライン) - Yahoo!ニュース

これはビジネス上の真理でしかないのだ。

中身は無くてもM&Aでの売却を狙うのであれば、サービスは旬の手前になければならない。競合が参入してくる中で、本来は売却したかった相手たちが思った以上に本気で資本と人的リソースを投下してきたのは、Origamiにとっては誤算だったと思う。

グルーポン戦争に関わったスタートアップ経験者が、Origamiの社内にいなかったのか、今となっては分からないけど、コントロールできた終末点だったことが悔やまれる。

メルカリの19年7~12月期、最終赤字が141億円に拡大 メルペイへの先行投資がかさむ(ねとらぼ) - Yahoo!ニュース

そして、危険な足音は、メルカリにも忍び寄っている。本業のイノベーションや事業拡大を疎かにして、シナジーが全くない決済事業に踏み込んでしまった。撤退のタイミングを逸しつつあるのは、DeNAGREEが北米事業にのめり込んでいった状況と非常に似ている。なんの因果かわからないけど、偶然にも、メルペイの社長は、当時GREEで海外市場に切り込んでいった青柳氏であるのも興味深い。

もしもメルカリが、メルカリであり続けたければ、今すぐにコアバリューへ向き合うべきだろう。少なくとも、投資家目線で言えば、上場後のメルカリの戦略と実行された戦術で納得感があるものは無かった。損切りは早いに越したことはないのだから。

上長の経費と時間の使い方で分かる、さっさと離れた方が良い組織

経費と部下の時間を貪る上司には近づかない方が良い

20代の前半の頃、全く仕事ができなかった自分が、自分でも信じられないような成長を遂げた時期がいくつかあった。30代後半になって、様々な経験を経てその頃を思い返すと、その時期に自分が所属していた組織の経営陣と上司はいかに優秀で魅力的だったのかという話に結実することが多いことに気がついた。

右も左も分からない若手の自分ですら理解できた「シンプルで力強い事業戦略」と、誰に対しても首尾一貫として態度を変えない「公明正大なマネジメント」によって、仕事でも大きな成果を得ることができ自信を得ることができたことは今でも感謝しているし、自分が経営する上での大きな指針となっている。

逆に成長できなかった時期もある。原因となったのは、日常的な、ボードメンバー(経営陣)の”残念な”振る舞いだった。”残念な”振る舞いと聞くと、「経営方針」のことかと思うかもしれないが違う。

経営方針に対する不満は、会社(経営陣)と従業員個々人との「イデオロギー(とか指向性)」の違いに基づく部分もあるので、一概に経営陣だけの問題とは言えないと考えている。資本主義と社会主義があるように、挑戦的な人もいれば保守的な人もいる。だからあまり気にならない。

ここで書きたい経営メンバーの”日常的”な”残念な”振る舞いは、時と場合によっては「職権乱用」「私物化」と捉えられかねないものが多い。経費や配下メンバーの業務時間に影響を及ぼすものだ。

結果として、「会社 対 従業員個々人」という構図だった問題が、「経営陣個々人 対 従業員個々人」という構図になってしまうことで、特定の経営メンバーを恨んだり嫌いがちになる。そうすることで、経営メンバーを嫌うと、会社自体も嫌いになってしまい、最終的には離職される確率が高まるかもしれない。

とにかく経費と時間の使い方が雑

出張費は、経費の中では比較的小さいものなので、各決裁レイヤーのメンバー(ボードメンバー)の裁量に任せている会社が比較的多いだろう。それ故に、所属する企業組織のガバナンスの公平性や、ボードメンバーの人間性を知るには大変便利なツールだと思う。

もしも、経営能力と志が低いボードメンバーが出張を決裁するのであれば、出張を慰安旅行のように扱い、経費や時間を無駄に使っていることが分かるからだ。彼らの出張に対する取り組み方を見れば、経営者として尊敬(信頼)すべきかが結構判断しやすいと私は思う。キャリアアップを狙っていきたいのであれば、こんな職場ならさっさと見切りをつけるのもありじゃないかと思う。

残念なボードメンバーにありがちな出張アクション

出張の目的は「視察」「意見交換」が多い
目的はビジネス面の進展ではないので、進展が求められないイベントが好き。
大規模なカンファレンス参加や、研修参加、支社訪問が多い。

この視察や研修名目の海外出張の問題点は、コーディネーター役に任命されたスタッフに実はかなり負担となる点だ。加えて、忘れがちな視察先(受け入れ先)の事業者にも負担を強いている。

一番の問題点であり、その他の問題を引き起こす真因でもあるのが「目的意識の欠如」です。視察希望者の70%くらいは「こういうことをするために、こういう企業を訪問して、こういう話を聞きたい」といった、具体的な目的を持っていません。

日本企業は「お勉強」海外視察を撲滅せよ。日本人は相手の時間奪う意識が希薄

「視察」「意見交換」で打診を受ける事業者は何の準備をすればよいか分からない。また、中身のないミーティングの開催を、先方に打診しなくてはならない部下の気持ちは当然理解できていない。いずれにせよ、当人以外の時間を消費していることに気がつけないボードメンバーが、部下の尊敬を集める可能性は低い。

オフサイトミーティングを開催したがる
単なる慰安旅行を「オフサイトミーティング」と言い換えて開催してるケースも分かりやすい。ゴルフや温泉を、会社の経費を使って、気心が知れた仲間たちと楽しめるものだと考えている。開催場所が、なぜか宮崎とか函館とか地方空港がある都市になってたりするのも特徴かもしれない。

ちなみに、この手のミーティングを開催したあとに、主催者より参加者に対して、どんなことが具体的に議論されたのか周知された記憶が過去ほとんどない。大体は、宴会とかであった粗相の共有ばかり...参加者は盛り上がるのでしょうが、参加してないスタッフからすれば愛想笑いするのが精一杯なのだ。

CESやMWCなどの海外イベントに行く、そしてエストニアは絶対に行く
毎年、CES、MWC、SXSWの季節になると憂鬱だった。イベント参加の日程を事前に押さえておく指示が来る。開催時期よりもだいぶ前に来るとすれば、そのボードメンバーはだいぶ”やばい”(=暇)かもしれない。

上述の通り、目的は「慰安旅行=視察」なので、現地企業との「商談」はとにかく避けることが多い。勝手にミーティングを設定すると、何か理由をつけて「俺は参加しない」と言われることも多い。故に、ミートアップ付きのチケットは購入せず、一般人向けのチケットを買う。昼も夜も同行メンバーと食事(=飲み会)を開催する。

現地では、海外の事業者との会食機会が無いが、日本から来ている、日本企業の知り合いと落ち合って食事(=飲み会)をすることは多い。単なる食事が、会食扱いになるので、経費で落とせるようになるから...

最近だと、IT先進国と呼ばれる「エストニア」に行きがちという噂がある。(これまでだと、上海、シンセン、シンガポール、シルコンバレーあたりが行きつけだった。)マイナンバーのシステム構築するベンダーでもないのに、一民間企業のマネジメントメンバーが視察に行って意味のあるアウトプットをしている所を見たことが無い。

結局のところ、現地でアクション取れないのであれば、日本でTechcrunchをチェックした方がむしろコストも体力も使わずに済むので効率的なのになと、日本に残されたスタッフはみんな思っている。

出張の成果は、訪問先のクライアントの決裁者の連絡先
商談ではなくて、会っただけなので、議事録はなくて、先方と何が話されたかよく分からない。結局、引き継ぎメンバーが改めてアポイントを入れて再度ゼロから話すことになる。

とにもかくにも「具体的な話を持ってくる」ということ。こういう案件があって、一緒にやれるところを探したいとか、こういうことをしたいから、これについての知見を持っているところに会いたいとか。

日本企業は「お勉強」海外視察を撲滅せよ。日本人は相手の時間奪う意識が希薄

引き継ぐ部下達にとっては、終点が見えない地獄でしかない。
むしろ、仕事が増えるので、会わないで欲しい...

一人で出張しない
出張の帯同人数が多い。帯同スタッフがいつも固定的なのも特徴。自己解決するつもりはないので、当然、英語とか現地語を自分で話す気はさらさら無い。下手すると、ホテルのチェックインまでコーディネートが必要になる。

ビジネスクラスに拘る
現地についてすぐの商談などの予定が入っていないし、帰国後も速攻で仕事に取り掛かる予定が入ってないのに、ビジネスクラスに乗りたがる。

クラスを落とせば、経費の節約にもなる。もしくは、若手の帯同者を増やし、海外にも連れていくことで経験も積ませることができる。ビジネスクラス搭乗をビジネス遂行のためのソリューションではなくて、単なる自分の権利だと勘違いしている。

マイレージプログラムに拘る
出張が多いため、マイルが貯まりやすい。故に、マイルを貯めることに拘る。ANA系/JAL系と自分が決めているプログラムの便に乗れないのであれば、無駄に、現地で前泊・後泊してフライトを調整する。

そもそも、そのマイレージは会社が負担したものなのだけど...
出張の目的が、明確でゴールがあれば、はっきり言って航空会社も便もどうでもいい話だし、無事に事故なくトラブルに巻き込まれず帰国できるならなんでもいいはず。 滞在時間を最小に抑えれば時間も無駄にならないのに、自分には甘くなっているボードメンバーはかなり多い。

最後に

出張という日常的なシーンを切り取っただけでも、自分が所属する組織の健全性は垣間見えると思う。恐ろしいのは、こうして(出張など経費の使い方においては)非合理な選択をしているボードメンバーに限って、部下に対しては合理的な選択(ROI、生産性、残業時間の抑制など)を要求してくる点である。言動と行動をできる限り一致させることが経営陣に対する信頼に繋がると思うので、自身の振る舞いにおいては気をつけていきたいと思う。

賢い事業計画と賢い立案者だけでは事業は立ち上がらない

社内で一番のスター人材の企画が成功するとは限らない

様々な新規事業や新サービスの立ち上げに携わってきて思うのが、会社で一番賢そうなスター人材が作ったエクセレントな事業計画でも、いざ実行に移すと割と派手に大コケするなあということ。会社が大事にしたい人材ゆえに、その失敗は公にされず、延々と塩漬けされることもある。

色々考えてみると、原因は、事業計画が全てじゃないのだなと分かってきた。
おそらく、立案者の能力が高すぎることが原因なのだと思う。

能力の高さゆえに事業計画の立案を任されたのだけど、作り出した計画をその通りに実行(Execute)できるのも、彼/彼女しかできないことに気がつけないのだ。

立案者の「私も実際に営業してみたのですが、」は悪手

立案された事業計画のフィジビリティ検証段階において、熱意を示すために立案者自身がExecuteに加わることは多い。ただ、「過度」にExecuteに加わることで、経営上のミスジャッジを引き起こしてしまう。

「私も実際に営業したのですが、クライアントからの反応もよく、拡販に自信を持ちました」というプレゼンテーションを重要な経営会議で行うことは多々ある。何を隠そう、私もやってしまったことがある。(ちなみに、このプレゼンを一度仕掛けると、自己満足に浸れる副作用があるから、ついつい、またやってしまいがちだ。)

ただ、やりすぎは悪手だと考えている。立案者の企画に対する熱量を示すためにやった行動が、マイナスに働いてしまう。

一番大事なのは計画実行の再現性

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私が思うに、寸分の狂いもなさそうな計画を作りこんだとしても、結局は、Executeフェーズにおいては、誰が担当してもできるという「再現性」の方が将来のスケールのために重要になる。

だからこそ、フィジビリティ検証段階では、最悪な条件をあえて設定し、そのときのパフォーマンス指標がどうなるか、勇気をもって量ることが重要だ。例えば、営業検証について言えば、ロジカル志向のスタッフではなく、直感型でスポーツマンタイプのスタッフをあえてアサインしたほうが良い。

世の中、そんなに頭ばかり使って売り込める人は多くない(将来、営業リソース確保で苦しむ)し、相手も同様にロジカルな人ばかりじゃない(将来、売り込み先のマーケットの確保で苦しむ)のだ。

ちなみに、更に厳しい条件を課すならば、営業代理店に販売を委託してみるのも一手である。つまりは、臨機応変にクライアントの意向を読み取り商談の流れを組み立てていくことを要求せず、商品自体の価値でどこまでクライントの関心を弾きつけられるかに拘るのだ。

スター人材無しでも業績を積み上げることができるか

とにかくゼロ→イチのスタートにおいて取得すべきは、プレーンな数字だ。
もしも、経営者の立場でフィジビリティ検証の報告を受けるのであれば、間違っても、スター人材を追い込み過ぎて、彼/彼女にしかできない着飾った数字を提出させてはいけない。

もしも、立案側の立場で報告するにしても、「ミニマムでもこのパフォーマンスを出せるのだ」と胸を張って言うべきだ。そこまでやれば、あとは立案者が無理をしなくても、資金や人的リソースという変数を経営が動かすことで、スケールの大きさは変えられるのだから。

この段階でゴージャスな着飾った数字でほらを吹けば、いずれ苦しむのは経営陣も、立案者もどちらもである。だからこそ、早期に健全な投資判断を勝ち取ることで、その後の1→10のフェーズでも、大きな方向転換を強いられることなく正しい方向に舵をとり続けられることは大事なのだ。

0→1のフェーズで得られた情報や、知識、経験を次のフェーズで無駄にしないためにも、とにかくプレーンな数字を手に入れることが全てである。