Intrapreneur Marketing Note

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上長の経費と時間の使い方で分かる、さっさと離れた方が良い組織

経費と部下の時間を貪る上司には近づかない方が良い

20代の前半の頃、全く仕事ができなかった自分が、自分でも信じられないような成長を遂げた時期がいくつかあった。30代後半になって、様々な経験を経てその頃を思い返すと、その時期に自分が所属していた組織の経営陣と上司はいかに優秀で魅力的だったのかという話に結実することが多いことに気がついた。

右も左も分からない若手の自分ですら理解できた「シンプルで力強い事業戦略」と、誰に対しても首尾一貫として態度を変えない「公明正大なマネジメント」によって、仕事でも大きな成果を得ることができ自信を得ることができたことは今でも感謝しているし、自分が経営する上での大きな指針となっている。

逆に成長できなかった時期もある。原因となったのは、日常的な、ボードメンバー(経営陣)の”残念な”振る舞いだった。”残念な”振る舞いと聞くと、「経営方針」のことかと思うかもしれないが違う。

経営方針に対する不満は、会社(経営陣)と従業員個々人との「イデオロギー(とか指向性)」の違いに基づく部分もあるので、一概に経営陣だけの問題とは言えないと考えている。資本主義と社会主義があるように、挑戦的な人もいれば保守的な人もいる。だからあまり気にならない。

ここで書きたい経営メンバーの”日常的”な”残念な”振る舞いは、時と場合によっては「職権乱用」「私物化」と捉えられかねないものが多い。経費や配下メンバーの業務時間に影響を及ぼすものだ。

結果として、「会社 対 従業員個々人」という構図だった問題が、「経営陣個々人 対 従業員個々人」という構図になってしまうことで、特定の経営メンバーを恨んだり嫌いがちになる。そうすることで、経営メンバーを嫌うと、会社自体も嫌いになってしまい、最終的には離職される確率が高まるかもしれない。

とにかく経費と時間の使い方が雑

出張費は、経費の中では比較的小さいものなので、各決裁レイヤーのメンバー(ボードメンバー)の裁量に任せている会社が比較的多いだろう。それ故に、所属する企業組織のガバナンスの公平性や、ボードメンバーの人間性を知るには大変便利なツールだと思う。

もしも、経営能力と志が低いボードメンバーが出張を決裁するのであれば、出張を慰安旅行のように扱い、経費や時間を無駄に使っていることが分かるからだ。彼らの出張に対する取り組み方を見れば、経営者として尊敬(信頼)すべきかが結構判断しやすいと私は思う。キャリアアップを狙っていきたいのであれば、こんな職場ならさっさと見切りをつけるのもありじゃないかと思う。

残念なボードメンバーにありがちな出張アクション

出張の目的は「視察」「意見交換」が多い
目的はビジネス面の進展ではないので、進展が求められないイベントが好き。
大規模なカンファレンス参加や、研修参加、支社訪問が多い。

この視察や研修名目の海外出張の問題点は、コーディネーター役に任命されたスタッフに実はかなり負担となる点だ。加えて、忘れがちな視察先(受け入れ先)の事業者にも負担を強いている。

一番の問題点であり、その他の問題を引き起こす真因でもあるのが「目的意識の欠如」です。視察希望者の70%くらいは「こういうことをするために、こういう企業を訪問して、こういう話を聞きたい」といった、具体的な目的を持っていません。

日本企業は「お勉強」海外視察を撲滅せよ。日本人は相手の時間奪う意識が希薄

「視察」「意見交換」で打診を受ける事業者は何の準備をすればよいか分からない。また、中身のないミーティングの開催を、先方に打診しなくてはならない部下の気持ちは当然理解できていない。いずれにせよ、当人以外の時間を消費していることに気がつけないボードメンバーが、部下の尊敬を集める可能性は低い。

オフサイトミーティングを開催したがる
単なる慰安旅行を「オフサイトミーティング」と言い換えて開催してるケースも分かりやすい。ゴルフや温泉を、会社の経費を使って、気心が知れた仲間たちと楽しめるものだと考えている。開催場所が、なぜか宮崎とか函館とか地方空港がある都市になってたりするのも特徴かもしれない。

ちなみに、この手のミーティングを開催したあとに、主催者より参加者に対して、どんなことが具体的に議論されたのか周知された記憶が過去ほとんどない。大体は、宴会とかであった粗相の共有ばかり...参加者は盛り上がるのでしょうが、参加してないスタッフからすれば愛想笑いするのが精一杯なのだ。

CESやMWCなどの海外イベントに行く、そしてエストニアは絶対に行く
毎年、CES、MWC、SXSWの季節になると憂鬱だった。イベント参加の日程を事前に押さえておく指示が来る。開催時期よりもだいぶ前に来るとすれば、そのボードメンバーはだいぶ”やばい”(=暇)かもしれない。

上述の通り、目的は「慰安旅行=視察」なので、現地企業との「商談」はとにかく避けることが多い。勝手にミーティングを設定すると、何か理由をつけて「俺は参加しない」と言われることも多い。故に、ミートアップ付きのチケットは購入せず、一般人向けのチケットを買う。昼も夜も同行メンバーと食事(=飲み会)を開催する。

現地では、海外の事業者との会食機会が無いが、日本から来ている、日本企業の知り合いと落ち合って食事(=飲み会)をすることは多い。単なる食事が、会食扱いになるので、経費で落とせるようになるから...

最近だと、IT先進国と呼ばれる「エストニア」に行きがちという噂がある。(これまでだと、上海、シンセン、シンガポール、シルコンバレーあたりが行きつけだった。)マイナンバーのシステム構築するベンダーでもないのに、一民間企業のマネジメントメンバーが視察に行って意味のあるアウトプットをしている所を見たことが無い。

結局のところ、現地でアクション取れないのであれば、日本でTechcrunchをチェックした方がむしろコストも体力も使わずに済むので効率的なのになと、日本に残されたスタッフはみんな思っている。

出張の成果は、訪問先のクライアントの決裁者の連絡先
商談ではなくて、会っただけなので、議事録はなくて、先方と何が話されたかよく分からない。結局、引き継ぎメンバーが改めてアポイントを入れて再度ゼロから話すことになる。

とにもかくにも「具体的な話を持ってくる」ということ。こういう案件があって、一緒にやれるところを探したいとか、こういうことをしたいから、これについての知見を持っているところに会いたいとか。

日本企業は「お勉強」海外視察を撲滅せよ。日本人は相手の時間奪う意識が希薄

引き継ぐ部下達にとっては、終点が見えない地獄でしかない。
むしろ、仕事が増えるので、会わないで欲しい...

一人で出張しない
出張の帯同人数が多い。帯同スタッフがいつも固定的なのも特徴。自己解決するつもりはないので、当然、英語とか現地語を自分で話す気はさらさら無い。下手すると、ホテルのチェックインまでコーディネートが必要になる。

ビジネスクラスに拘る
現地についてすぐの商談などの予定が入っていないし、帰国後も速攻で仕事に取り掛かる予定が入ってないのに、ビジネスクラスに乗りたがる。

クラスを落とせば、経費の節約にもなる。もしくは、若手の帯同者を増やし、海外にも連れていくことで経験も積ませることができる。ビジネスクラス搭乗をビジネス遂行のためのソリューションではなくて、単なる自分の権利だと勘違いしている。

マイレージプログラムに拘る
出張が多いため、マイルが貯まりやすい。故に、マイルを貯めることに拘る。ANA系/JAL系と自分が決めているプログラムの便に乗れないのであれば、無駄に、現地で前泊・後泊してフライトを調整する。

そもそも、そのマイレージは会社が負担したものなのだけど...
出張の目的が、明確でゴールがあれば、はっきり言って航空会社も便もどうでもいい話だし、無事に事故なくトラブルに巻き込まれず帰国できるならなんでもいいはず。 滞在時間を最小に抑えれば時間も無駄にならないのに、自分には甘くなっているボードメンバーはかなり多い。

最後に

出張という日常的なシーンを切り取っただけでも、自分が所属する組織の健全性は垣間見えると思う。恐ろしいのは、こうして(出張など経費の使い方においては)非合理な選択をしているボードメンバーに限って、部下に対しては合理的な選択(ROI、生産性、残業時間の抑制など)を要求してくる点である。言動と行動をできる限り一致させることが経営陣に対する信頼に繋がると思うので、自身の振る舞いにおいては気をつけていきたいと思う。