マネジメントスタッフの評価に必要なこと
組織の中で、運営の鍵を握るはずのマネジメントスタッフだが、評価軸がはっきりしない会社はまだまだ多い。これまでの経験を基に、優秀なマネージャーを見つけ出すのに便利な指標をメモしておく。
- 「自分よりも優秀な人材を採用・育成できているか」
- 「仕事をいくつ生み出してきたか」
- 「部下の育成はできたのか?(社内表彰は?)」
- 「ポストをいくつ作ったか」
- エキスパート・リーダシップは特に大事になる
「自分よりも優秀な人材を採用・育成できているか」
結局のところ、どの階層のマネジメントであっても、これに尽きる。
マネージャーは、自分より優秀なリーダーを見つけ出せたか?
経営ボードは、自分より優秀なマネージャーを見つけ出せたのか?
Aクラスの人は、Aクラスの人と一緒に仕事をしたがる。Bクラスの人は、Cクラスの人を採用したがる。
A-level people want to work with A-level people. B-level people tend to hire C-level people.──Silicon Valley proverb
一年間で一人も自力で採用できていない役員とかマネージャーがよくいるが、一番重要な仕事を怠っていると言える。最終面接に出ればいいというものではない。自分の肩書をフル活用して、引き抜きたい人材層にアプローチし続けているかどうかが重要なのである。
優秀な人材はアイデアを持っている。アイデアを生むのが好きな人たちだ。管理職はこうした新たなアイデアを常に好むわけではない。恐怖心を持った上司は、自分よりも良いアイデアを持つ人を特に恐れ、新たなことに挑戦するのを好まない。新たなアイデアはうまくいかないかもしれないからだ。恐怖に支配された上司は、新たなことを試して失敗すれば、自分の評価が下がったり、問題になったりするのではないかと恐れている。
優秀な人材は就職の要件を持ち、自分は雇用に適した人材だと知っている。多くの管理職は、将来自分を批判するかもしれない候補者や、良い業績を出したことで昇給や賞与を要求するかもしれない候補者を選ぶことをためらう。
「仕事をいくつ生み出してきたか」
魅力的な仕事を創造できると、仕事をフックとして、優秀な人材を外部から引き抜いたり、社内から集めることができるようになる。給与などの条件で他社に負けることがあっても、仕事内容自体に魅力が込められるようになると、候補者の興味や関心に働きかけができるようになるので、中途採用においては武器になる。また、仕事が創造できるようになると、社内の他のスタッフからの評価も、「面白そう」「楽しそう」「イキイキしている」といったポジティブなものになるため、公募や異動などで、自分の部署を指名してくれる確率が上がる。こうすることで、優秀な人材が集めやすくなる。
出来の悪いマネージャーは、仕事は生み出すのではなく「与えられる」というスタンスであることが多い。そのため、与えられた仕事を推進するために、足りないパーツを埋めようと頑張るが、そんな仕事は候補者にとっては全く魅力的ではないので、優秀な人材は遅々として集まらない。
「部下の育成はできたのか?(社内表彰は?)」
育成の結果がどうだったのか、TOEICのように点数で計れるものは少ない。
言葉にするならば、「次のタームで、任せる仕事内容がレベルアップしそうか?」だと思う。ただ、この観点では、自分の配下チームメンバーであれば、与える仕事内容を変えることはできるが、有効範囲が狭い。
もしも、部下の将来を考えて、本気で育成するのであれば、他のグループからも認められやすい、「社内表彰」を取らせておくことをお勧めする。社内表彰を取ることで、全社プロジェクトへのアサインなどが決まりやすくなり、本人のキャリアにとってもプラスになるためだ。
ハーバードビジネスレビューの中で、「部下の仕事の満足度は上司の専門技能に左右される」という論文があった。
結論はこうなる。従業員が最も喜びを感じるのは、「経験に裏打ちされた知識を持つ上司」の下で働くときであり、その喜びが仕事のパフォーマンスをも高めるのだ。
新しいスタイルのマネージャーは「エキスパート・リーダーシップ」があるそうだ。単なる世話焼きではなく、実践的で具体的なサポートが出来なければ、マネジメントの価値は無くなってしまう。
「ポストをいくつ作ったか」
自分の配下のスタッフを育成したのちは、速やかにマネジメントのポストを与え、経験を積ませていく必要がある。マネジメント経験の有無は、キャリアにおいて明確な差となるので、部下の将来を本気で考えるなら、四の五の言わず経験させなければならない。そのためにも、前段の仕事を生み出す必要性がある。仕事が発生するということは、遂行に必要なポストが生まれる可能性が高いので、ポストにつけやすくなるからだ。
もしも、ポストを新たに生み出せなくても、自分よりも優秀だと思うスタッフに対しては、自分のポストを代わりに差し出していくくらいの覚悟が必要だろう。自分より優秀なスタッフに出会えたのだからむしろラッキーだと思えばよい。自分のポストが無くなることを心配する人もいるが、自分がポストを掴むチャンスなんてまだまだあるわけだと信じられないようであれば、そもそもマネジメントを担当する器じゃない。
出来の悪いマネージャーの場合、配下のメンバーに延々とポストを与えない。そもそも、そう思うマネージャーにとっては、ポストは誰かから「与えられた」ものでしかないので、「生み出す」ことについては無関心だったりする。
エキスパート・リーダシップは特に大事になる
もしも、組織のコンディションが悪い場合、自分の上長や、会社の経営スタッフを、上述の4つのアセスメントで測ってみることをお勧めする。
今の時代の「マネジメント」に期待されるのは、単なる「評価者」としての役割ではなく、「能動的なコーディネーター = エキスパート・リーダーシップの発揮」だと思う。配下のマネージャーを評価するのにもこれらのアセスメントは役に立つし、メンバーの立場で見ても、自分の置かれている環境を見直す意味では、素晴らしいマネジメントの下で働けているかどうかを確かめるためにも、ぜひ一度アセスメントを試してほしい。