Intrapreneur Marketing Note

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新商品の値付け(プライシング)方法

新サービスを開発すると避けて通れないのが値付けだろう。
無形のサービスやソフトウェア、デジタルコンテンツであろうと、有形のハードウェアであろうと値段を決めないことには売上が立たないし、利益が生み出されない。ところが、思ったよりも、社内に、値付けの経験を持った人はいないものだ。どうやって値段を決めていくのか少し掘り下げてみたい。

原価から計算して、一定の利益率を乗せて決定する方法

商品の値段(売上)の中身は、コストと利益で構成されていることは容易に想像が付く。そのため、その商品を提供するのにかかるコストを積み上げて、そこに欲しい利益率を掛け合わせて価格を決定しようとするのはスタンダードと思える。コストは、原価と販管費に分けて算定できるので、この方法だと割とスムーズに答えにたどり着けそうだ。

ただ、この方法には問題がある。コストから積み上げるだけなので、自己完結型の値付けになりやすいのだ。そのため、提供される商品が持つ、「世の中」的な「希少性」を無視しがちな点にある。だから、結果として、割安な料金設定となってしまう可能性を秘めている。本来は、提供する商品が、世の中に存在しないのであれば、強気な価格設定が可能である。最初から控えめに設定することで、自ら利益を削ってしまうことになりかねないので注意が必要だ。

消費者に、いくらまでなら払えるかを聞きだす方法

逆に、購入してもらう側(消費者)に聞き出す方式もある。
PSM(Price Sensitivity Measurement)分析という手法を使うことで、いくらだったら安すぎて買わないのか、いくらだったら高すぎて買わないのかを特定して行く。そして、ざっくり言えば、「安すぎる」カーブと「高すぎる」カーブの交点がベストな値付けだとするやり方だ。ある意味、他己完結型の値付けになる。

この方法の問題点は、実際に使ってみると分かるのだが、交点は比較的割安な方に流れがちなことが上げられる。だから、このやり方も不十分だと思う。

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浅く広く稼ぐか/深く狭く稼ぎ出すのかで、値付けのポリシーは変わる

コモディティ化してどこの会社でも提供できる商品の場合、値付けも「同質化」に向かいがちで、他社よりも1円でも安く提供し、コストも切り詰めて1円でも多く利益が出るようになりがちである。こちらのケースにおいては、実は値付け(マーケティング)の出番は少ない。

逆に、世の中に存在しなかった商品であれば、値付け自体がブランディングに繋がる可能性があるので、ここは大事に検討した方が良い。基本的に、値段は聞き手の商品に対する勝手な期待を高める効果を持つ。消費者は、高い商品については、高付加価値や希少性とかの何かの理由があって高いはずだと直感的に考えるものだ。

例えば、ワインの価格は、原価から積み上げて考える人には到底理解できない価格設定となる。けれども、モノには、物的な価値に加えて、「経験」という質的な価値があることを理解できれば、「二度と味わえない」とか「もう、製造されない」とか「再現できない」となると希少性がぐいぐい上がり、投機目的の購入も増えたりすることがよく分かる。だから、当初の想定価格を大幅に超えていく。製造側も、商品自体がすぐに欠品することで、本当に買って欲しい人に買ってもらえなくなることを防ぐために、値段をどんどん上げていく。

toyokeizai.net

okutta.blog.jp

では、いくらまで値付けは高くしてよいのか?上限は、売り込みたい消費者の中で、マジョリティとなるセグメントの予算状況(可処分所得)を把握し、その何%を取り込めるか考えるのが楽である。

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例えば、子供の習い事の事業に参入する場合、おおよその平均月謝は15,000円程度と言われている。この15,000円のうち、自分達のサービスがいくら程度抑えられるか(抑えたいか)という観点で考えればよい。そして、全体平均で見るよりも、世帯年収などで更に分けて考えたほうがよりターゲットが鮮明になるので理想的である。

全世帯から均等に5,000円を頂くよりも、アッパー層から30,000円頂く方が結果的に良かったりもするのだ。全員を対象にしてプライシングするのは絶対的に避けたほうが良い。

benesse.jp

事後の値上げは大変。事後の値下げは簡単。

事後の値上げは、既存顧客への説明や、販促物の差し替えなどで結構なパワーを使うだけど、事後の値下げはあっけなくできてしまう。だからこそ、初期の価格設定については慎重に野心的に取り組むべきだと思う。

また、値付けの経験がないと、どうしても売れ行きを心配して、過度に安く設定しがちなので、思い切って、最初に思った価格設定の3倍くらいの価格設定にしてみると良かったりする。そうすると、ヌルイ商品コンセプトでは、むしろお客様に失礼になるために、コンセプト自体の磨きなおしに目を向けることになるからだ。自分自身にプレッシャーを掛けてみるのも悪くない。

いずれにせよ、コストを削って利益を捻出することを考えれば、十分な価格を設定して売上を稼ぎ出す方が絶対にいいので、それくらいのスタンスでやってみた方が良い。