Intrapreneur Marketing Note

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賢い事業計画と賢い立案者だけでは事業は立ち上がらない

社内で一番のスター人材の企画が成功するとは限らない

様々な新規事業や新サービスの立ち上げに携わってきて思うのが、会社で一番賢そうなスター人材が作ったエクセレントな事業計画でも、いざ実行に移すと割と派手に大コケするなあということ。会社が大事にしたい人材ゆえに、その失敗は公にされず、延々と塩漬けされることもある。

色々考えてみると、原因は、事業計画が全てじゃないのだなと分かってきた。
おそらく、立案者の能力が高すぎることが原因なのだと思う。

能力の高さゆえに事業計画の立案を任されたのだけど、作り出した計画をその通りに実行(Execute)できるのも、彼/彼女しかできないことに気がつけないのだ。

立案者の「私も実際に営業してみたのですが、」は悪手

立案された事業計画のフィジビリティ検証段階において、熱意を示すために立案者自身がExecuteに加わることは多い。ただ、「過度」にExecuteに加わることで、経営上のミスジャッジを引き起こしてしまう。

「私も実際に営業したのですが、クライアントからの反応もよく、拡販に自信を持ちました」というプレゼンテーションを重要な経営会議で行うことは多々ある。何を隠そう、私もやってしまったことがある。(ちなみに、このプレゼンを一度仕掛けると、自己満足に浸れる副作用があるから、ついつい、またやってしまいがちだ。)

ただ、やりすぎは悪手だと考えている。立案者の企画に対する熱量を示すためにやった行動が、マイナスに働いてしまう。

一番大事なのは計画実行の再現性

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私が思うに、寸分の狂いもなさそうな計画を作りこんだとしても、結局は、Executeフェーズにおいては、誰が担当してもできるという「再現性」の方が将来のスケールのために重要になる。

だからこそ、フィジビリティ検証段階では、最悪な条件をあえて設定し、そのときのパフォーマンス指標がどうなるか、勇気をもって量ることが重要だ。例えば、営業検証について言えば、ロジカル志向のスタッフではなく、直感型でスポーツマンタイプのスタッフをあえてアサインしたほうが良い。

世の中、そんなに頭ばかり使って売り込める人は多くない(将来、営業リソース確保で苦しむ)し、相手も同様にロジカルな人ばかりじゃない(将来、売り込み先のマーケットの確保で苦しむ)のだ。

ちなみに、更に厳しい条件を課すならば、営業代理店に販売を委託してみるのも一手である。つまりは、臨機応変にクライアントの意向を読み取り商談の流れを組み立てていくことを要求せず、商品自体の価値でどこまでクライントの関心を弾きつけられるかに拘るのだ。

スター人材無しでも業績を積み上げることができるか

とにかくゼロ→イチのスタートにおいて取得すべきは、プレーンな数字だ。
もしも、経営者の立場でフィジビリティ検証の報告を受けるのであれば、間違っても、スター人材を追い込み過ぎて、彼/彼女にしかできない着飾った数字を提出させてはいけない。

もしも、立案側の立場で報告するにしても、「ミニマムでもこのパフォーマンスを出せるのだ」と胸を張って言うべきだ。そこまでやれば、あとは立案者が無理をしなくても、資金や人的リソースという変数を経営が動かすことで、スケールの大きさは変えられるのだから。

この段階でゴージャスな着飾った数字でほらを吹けば、いずれ苦しむのは経営陣も、立案者もどちらもである。だからこそ、早期に健全な投資判断を勝ち取ることで、その後の1→10のフェーズでも、大きな方向転換を強いられることなく正しい方向に舵をとり続けられることは大事なのだ。

0→1のフェーズで得られた情報や、知識、経験を次のフェーズで無駄にしないためにも、とにかくプレーンな数字を手に入れることが全てである。