Intrapreneur Marketing Note

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会社よりも大事な、誰が上司になるか問題

就職&転職の際に多くの人が忘れていること

売り手市場ゆえなのか、就活生と面談すると、いくつかの会社の内定を持っているのだけど、どこの会社に行くべきか決めかねているという相談を良く受ける。自分はそうした相談を受けると、決まって聞き返すことがある。

「内定をもらっている会社で、誰の下で働くのか決まっているのか?」と。

大体の子はそんなこと考えたことが無かったと言う。そして決まっていないと言う。

特に働き始めの頃に、個人が仕事ができるように成長していくのは、会社ではなく、ロールモデルとなる上司(師匠)の関わり方によって、決まる部分が大きいことを忘れているのだ。これは非常にもったいないことだと思う。

極端なこと言えば、皆が羨ましがるような会社に入っても、ポンコツな上司の下に配属された場合、その自己満足の効能は1-2年のうちに吹っ飛び、「なぜこの会社を選んでしまったのか」、「他の同期たちは活躍していて羨ましい」と思い始めることになる。

あなたが配属されるのは、会社ではない。部署だ。
その部署の上司の変更はすぐには利かない。

なぜ、「誰が上司になるか」に拘るのかは、働き始めの20代の頃の時間がとても重要だからだ。20代は自分自身に向き合う時間・カネ・体力の「自由度」が多くあるのだ。

想像しておいた方が良いのは、30代が近づき、結婚して、家族が増えれば、20代の頃とは比べ物にならない位、制約が多くなっていくことだ。そうして、自分自身に対して、自由に費やせる時間も、カネも、体力も減って行く(変わりに、家族から提供される「幸せ」もあるけれど)。

この3資源をこれでもかというくらい先行投資していくのが20代で成長する極意なのかなあと思う。そしてその投資先の多くは、必然的に、最初に配属された部署の上司に委ねられるのだ。だからこそ、あなたの提供した「時間・カネ・体力」を最大限レバレッジしてくれる上司に巡り合えなければ、あなたが十分に成長しないうちに、ただただ資源は浪費され、次の世代の入社とともに入れ替えられる運命にある。

少なくとも、この瞬間における自分の未来の多くを、あなたは全くの見ず知らずの上司にかけている事を理解しておいた方がよい。

イチローだって紙一重で、凡選手になりかけた

どれだけの能力や天性を持っていても、組織の中から抜きん出るには、周囲の支えが無ければ難しい。どんなに素晴らしい大学を出ても、どんなに素晴らしいキャリアを積み上げていても、結局は組織である以上、周囲の関わりはゼロにはできない。

優秀な上司の下に配属されれば、模倣することで一気に成長スピードを速められるが、
肝心のロールモデルポンコツだと、そのロールモデルレベルにしかなれない。圧倒的な能力を持つ上司を持つことは凄い重要なのだ。そして、上司も出世し、更に大きな仕事を振ってくれるプラスの相乗効果が得られる。

天性の能力が周囲に理解されず、上司によって変わった例は、イチロー選手だろう。入団当時の監督には、彼特有の振り子打法が理解されず、2軍に落とされていた。そんな中、仰木監督が就任したことで、一気に世界的なプレイヤーまで駆け上がれたのだ。そして、仰木監督も、オリックスを優勝に導いたわけでWin-Winになれた。スポーツ界ではこんな事例はごまんとあるけど、ビジネス界も同様なのだと思う。

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ちなみに、私の新卒1年目は邦銀の開発部門だった。残念だけど、上司によってレバレッジされたと感じる部分は全く無かった(だから1年で退職した)。プログラミング開発に費やした時間分だけが、その後の自分の資産になっただけだった。

上司を自分で選ぶチャンスは手に入るか?

では、早い段階から、上司を選ぶ側に回るにはどうしたらよいのだろうか?新卒の場合、大企業への入社を決めた時点で、これはかなり難しいと思う。大企業では、誰と働けるか、入社前にお願いしたところでほぼ適わないのだ。

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採用にも関わっていた手前、感じるのは、新卒の採用人数はしょせん「リソース」だと考えている企業人事は多い気がする。だから、希望に満ちた新人の一人ひとりの個性や特徴を考慮して活躍できそうな部署を見つけ出す前に、人員が不足している部署の要求を満たす方を優先しがちに思える。

ここで、人数の小さな会社やベンチャー企業で働くメリットが出てくる。メリットは、誰と働けるかが事前にコントロールしやすいことなんじゃないかと思う。会社の顔となっている社長の近くで新卒が働く機会は大企業ではまずなさそうだし、成長著しいプロダクトを担当する部署を指名して入社するのも困難だろう。

けれども、小規模な企業であれば、可能性がまだあるのだ。プレスリリースで目にする「あのプロダクトを担当した○○さん」と一緒に働きたいという願いが叶う可能性が、大企業にいるときよりは少しでもあるわけで、これはメリットだと思う。

だからこそ、転職のタイミングは、新卒時代に叶わなかった、部署や上長指名での入社のチャンスなのだ。それなのに、また会社名で転職先を選ぶ人がまだまだ多いことを考えると、もったいないなあと感じる。

大企業で恵まれた上司に出会うのは、「運」にも左右される

こんなこと言ってしまうと元も子も無いけれど、大企業で、理想の上司を自力で勝ち取っていくのはどうすべきなのか自分でも結論は出ていない。会社を辞めようと思ったタイミングで、偶然アサインされたプロジェクトが、大当たりして、気が付いたら上司と一緒に昇格する事例もたくさん見てきた。

けど、誰かがアサインされるのには理由があるはずだ。

独りよがりに自分の能力を磨きこみすぎても、結局周囲のスタッフが気にしてくれなければ、宝の持ち腐れになるのだ。その能力を、1人でも多くの周囲のスタッフに気が付いてもらえるように、常に手助けしようと心がけ、他人のために使っていこうとするスタンスでいることが、結果として、自分の「売り込み」に繋がるのかもしれない。

まだ出会っていない、素晴らしい上司にいつか出会えることを期待して、毎日「徳」を積むしかないのだろうと思う。それが嫌ならば、小規模な会社に転職するか、会社を自分で設立するしかないのが現状ではないだろうか。